宗教について 〜 人の生と死を考える 注80

公開: 2023年3月29日

更新: 2023年4月17日

注80. 特許権

特許権は、17世紀頃のオランダで生まれた制度だと言われています。それは、商品として売られる物の作り方、原材料の調合の仕方や、どのような部品をどう組み合わせるかなどの製造方法など、良い商品を生み出す方法として、新しく考えられた方法が重要な場合に、その方法を守るために考えだされました。ただし、そのような新しい方法は、文書で表現され、それまでの方法とどう違うのかを明確に説明しなければなりません。そのような新しい方法についての文書は、公的な機関で審査され、登録されることが原則です。

同じような発明が、異なる人によって、別の場所で行われ、特許として申請されるかも知れません。その場合には、日本の法律では、先願主義と呼ぶ、先に申請した人に権利が与えられることになっています。米国では、先発明主義と呼ぶ、発明がなされた日時の早い方に権利を与える、考え方を採用しています。発明は、基本的に、人々にとって役に立つものであり、新しいものであり、自然の法則を使って、目的のことを実現するものでなければなりません。つまり、数学の理論を応用しただけの方法では、発明にはなりません。形のあるモノとして作られる必要があります。さらに、物理学の法則は、自然の現象であり、特許権の対象とはなりません。

現代の産業では、工場で生産され、市場に売り出される製品は、同じか、または似たような製品を、別の企業で生産され、市場に供給されることがないように、特許で自社の製品を守ることが重要になっています。特許で守られていない製品は、同じような製品を、安く作られても、法的な手段でそれを止めさせることはできません。ただし、特許で守ることは、似たような製品の開発を妨害することになるため、類似製品が市場に出回らなくなり、たとえ良い製品であったとしても、社会全体に広まらないかも知れません。

1960年代の末、東洋工業(現在のマツダ)は、ロータリーエンジンを開発し、それを搭載した自動車を売り出しました。この時、東洋工業は、多額の資金を投入して新エンジンを開発したため、数多くの特許で、他社が似たようなエンジンを、独自に開発できないようにしました。しかし、このことが裏目に出て、日本の他の自動車メーカは、ロータリーエンジンの開発を諦(あきら)め、従来型のエンジンに固執する戦略を取りました。東洋工業の車両生産台数は、限定されていたため、ロータリーエンジンは、十分な市場を得るほどまでに普及せず、東洋工業は、財政難に陥りました。

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